野球大好き2月号の記事です。(「野球選手がケガを防ぐための10の方法」)

はじめに

高校野球では、選手の健康管理や大会日程の円滑な消化といった観点から、今春の選抜大会に加えて、夏の全国選手権大会や地方大会でもタイブレークの導入が決まりましたね。

タイブレーク制とは、走者を置いて攻撃を始める制度で、決着がつきやすくなります。社会人野球の全国大会、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)やU18(18歳以下)ワールドカップなどの国際大会でも実施されています。

また、障害予防のための野球肘検診や指導者セミナーといった様々な活動も全国各地で開催され始めています。

【大規模調査の結果からの提言】

そんな中、3年前から全国の少年野球・中学野球選手の大規模な実態調査が行われています。(全日本野球協会、日本整形外科学会、運動器の10年・日本協会による実態調査)

 

調査内容は、投球数、練習日数、練習時間、平均試合出場数、シーズンオフ、セルフチェック、ウォーミングアップ、クーリングダウンの時間、自宅でのトレーニング、ピッチャー率・キャッチャー率、休養と整形外科への受診、整形外科医との連携など多岐にわたっています。

この調査結果から分かったことをまとめたのが、

・「長く野球を楽しむための10の提言」(表1)

・「中学生野球選手を障害・外傷から守る10の提言」(表2)

です。

 

肩やひじの故障で野球を断念せざるを得ない選手も少なくありませんが、この提言を参考にすることで、ケガなく野球を続けられるようになる可能性が高くなるはずです。

今回は、この大規模調査から得られたことを、少し紹介いたします。

【全力投球の球数制限】

ボールの投げすぎが肩やひじの障害に直結するということは、選手も指導者もある程度理解されていると思いますが、「では、いったいどの程度の球数なら安全なの?」という問いに対する答えが明確にはされてきませんでした。

ですが、今回のアンケート結果から、小学生の場合、「1日50球以上、1週間に200球以上の全力投球を行う選手は、明らかにそれ以下の選手と比べて痛みの発生率は高い」ことが確認できたということです。投球制限のガイドラインとして、具体的な投球数が明記されたわけです。(中学生は、1日70球以内、1週間に300球以内)

この数字を目安に、自分の投げた全力投球の数を数えて、記録することを習慣にしてほしいですね。

【ピッチャー、キャッチャーの育成】

肩・ひじの痛みを経験した選手の割合は、「投手および捕手経験者」が最も多く、次いで「投手」、「捕手」、「野手」の順になっています。

キャッチャーはピッチャーと同じく投球数が多い傾向にあるため、故障の多いポジションです。

指導者には、ピッチャーだけでなく、キャッチャー育成の意識改革が強く求められています。

【練習日数、練習時間】

1週間の練習日は、小学生は週3日、1日3時間以内。中学生は週6日、1日3時間以内が望ましいということです。 (ちなみに、日本臨床スポーツ医学会による「青少年の野球障害に対する提言」でも、中高生は、週1日以上の休養が必要で、個々の選手の体力と技術に応じた練習量と内容が望ましいとのこと)

【毎週月曜日はセルフチェックの日】

成長期における障害の初期は、痛みを感じないことが多いです。痛みを訴えたときは黄信号。

早期発見のために「毎週月曜日はセルフチェックの日」と習慣づけ、本人はもちろん保護者にも要領を説明して励行するようにしてください。

小・中学生の選手が痛みを感じている部位でダントツに多いのが、ひじです。

ひじの痛みは内側、外側、後方に分かれます。実際に3か所を自分で押してみて痛みがあるかどうかをチェックしましょう(セルフチェック)。痛みがある場合は、何らかの異常が考えられます。

また、ひじの曲げ伸ばしをしてみて、伸びや曲がりの角度が悪かったり痛みが出たりすると、異常がみられる場合があります。

ひじのチェックポイント 参考動画

この報告書では、上記以外にも、試合数やウォームアップ・クールダウン、ストレッチについても提言されています。

一度、読んで参考にしてみてはいかがでしょうか?

【運動器の10年・日本協会HP】

 

【整形外科専門医との連携】

選手の障害についてどこに相談していいのかわからない、ということも多いと思います。まずは、近くの整形外科で診断を受け、専門医を紹介してもらうのが最初の一歩です。

現状として、沖縄県内において選手の定期健診や整形外科的メディカルチェックを行っている医療機関は少ないかもしれません。

我々スポーツ医療にかかわる者としては、子供たちを障害から守るためにできる活動を、少しずつでも広めながら、より良い環境づくりをしていきたいと思います。

【最後に】

近年、少子化による子供の野球人口の減少や野球離れが進んでいますが、いまこそ指導者・保護者・医療・地域すべてが連携し、子供たちを障害から守る必要があるのではないでしょうか。

【参考資料】

朝日新聞デジタル・バーチャル高校野球

・平成26年度少年野球(軟式・硬式)実態調査 調査報告/ 全日本野球協会、日本整形外科学会、運動器の10年・日本協会

・平成27年度少年野球(軟式・硬式)実態調査 調査報告

・平成28年度中学野球(軟式・硬式)実態調査 報告書

・青少年の野球障害に対する提言(日本臨床スポーツ医学会 1994)

・高岸憲二ら/初の中学野球の実態調査からわかった野球障害を防ぐための10の提言!/Moving vol.25 2017

・馬見塚尚孝/野球医学の教科書/ベースボールマガジン社・2016