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月刊「おきなわ野球大好き」10月号(野球腰:腰椎疲労骨折/腰椎分離症)

うちな~ベースボール エンターテイメントマガジン

月刊「おきなわ 野球大好き」10月号に記事が掲載されました。

ブログへの掲載許可を頂いておりますので、こちらにも全文載せておきます。

腰椎疲労骨折、腰椎分離症は、成長期の腰痛で多い障害の1つです。

ぜひ読んでみてくださいね。

野球腰(腰椎疲労骨折/腰椎分離症)

高校野球は秋季大会が終わり、冬トレの時期が迫ってきましたね。

冬場のトレーニングでは、走り込みや筋力トレーニングなど、体づくりに重点を置いて練習を行うチームも多いと思います。

「ダッシュ100本!素振り1,000回!ロングティー200球!投げ込み200球!」

このようなハードな練習を繰り返していると、体のあちこちを痛めてしまいます。特にこの時期に最も多いケガのひとつが「腰痛」です。

なかでも「腰椎疲労骨折(ようついひろうこっせつ)」「腰椎分離症(ようついぶんりしょう)」というのは、10歳代前半の伸び盛りの青少年(発育期)のスポーツ活動で生じる腰痛の主な原因となっています。

ということで、今回は野球選手に多い「腰椎疲労骨折」「腰椎分離症」について、その原因と治療法、予防法についてのポイントお伝えします。

1 野球選手に多い腰椎分離症(吉田徹 2008

野球選手の腰痛

ある病院が行った調査結果では、高校野球選手の約40%という高い割合の選手が腰痛に苦しんでいるという報告があります。

腰痛の中でも野球選手に多くみられるのは、腰椎疲労骨折によるものです。腰の骨(腰椎)の椎弓根という場所に、運動によるストレスが過度にかかると、骨がストレスに負けて疲労骨折を起こします。この骨折が治らず、つかないまま成長してゆくと腰椎分離症という状態になってしまうのです。(図2,3)

図2

図3 日本整形外科学会HPより引用

一般の人では5%程度に腰椎分離症の人がいますが、スポーツ選手では30~40%の人が分離症になっています。

腰椎疲労骨折・分離症の原因

腰椎疲労骨折を年齢別に見ると13~16歳までの中学年時代に多発しています。(図4)

図4 腰椎疲労骨折発生年齢(大場俊二 2008)

中学生頃の発育期は、筋肉の柔軟性が低下しやすく、骨の強度も低下しやすい時期です。なぜなら、成長期の身長の伸びは骨が伸びることによって引き起こされますが、この急激な骨の伸びに筋肉の長さがついていけなくなる場合があるからです。

このような時期に、ジャンプや腰を過度に動かすことで腰椎の後方部分に亀裂が入って、疲労骨折や分離症が起こります。

「ケガ」のように1回で起こるわけではなく、スポーツの練習などで繰り返して腰椎をそらしたり(伸展)、回したり(回旋)することで起こります。

図5 長谷川 2002

症状・特徴

はじめはスポーツ中だけの腰痛という形で出ます。家に帰ってからの日常動作では痛みません。スポーツ中の痛みは、瞬間的な激痛で、走っているときや野球のバットを振ったときなどに瞬間的に「きゃっ!」とするような鋭い痛みを感じます。

簡単なチェック方法

【叩打痛テスト】

背中~腰にかけてトントンと叩き、痛みが出るかどうかをみる。

徐々に叩く強さを上げる。(図6

図6

【ケンプテスト】

身体を斜め後ろに倒し、痛みが出るかどうかをみる。(図7

図7

これらの検査で痛みが出たら、腰椎疲労骨折や分離症の疑いがあります。早めに病院を受診しましょう。病院ではレントゲン、CT、MRIなどを用いて詳しく検査をします。

治療法

腰椎疲労骨折の部分が治ることを「癒合(ゆごう)」といいます。

MRIによる検査結果から、癒合が期待できる場合と期待できない場合によって治療方法が変わってきます。(初期の癒合率は94%。終末期は0%。)

【骨癒合が期待できる場合】

・腰椎部の安静(運動の中止)

・コルセットによる腰部の固定(図8

8(西良浩一 2011

【骨癒合が期待できない場合】

・内服薬や外用薬で痛みをコントロールしながら早期復帰を目指す。

野球の動作での注意点

投げる、打つ、守備、走塁などの野球動作では、腰椎は複雑な動きをしていますよね。

特にひねり動作(回旋)や反らす動作(伸展)は注意が必要です。

・過度な回旋(腰を必要以上にひねり過ぎる)(図9

図9

・過度な伸展(腰を反らし過ぎる)(図10

図10

腰椎に大きなストレスがかかるので、このような動作を避けることが重要です。また、ストレスを減らすためには、全身の柔軟性や体幹の筋力も重要になってきます。以下のトレーニングも参考にしてみて下さい。

リハビリテーション・腰痛予防

【安静期(強い腰痛がある)】

・痛みのある幹部を安静にする。

【回復期(腰痛が軽減してきた)】

・ストレッチを開始する。

【強化期(軽度の運動で痛む)】

・段階的に負荷をかけ始める。

【復帰期(痛みが出ない)】

・競技に必要なレベルのトレーニングを行う。

 

【回復期からのストレッチの例】

ジャックナイフストレッチ(10秒×5回、朝、夜)

しゃがんだ状態で足首を握る。

胸と大腿をジャックナイフのようにくっつけた状態で、膝関節を徐々に伸ばす。

 

ウイングストレッチ

肩甲骨が浮かないようにしっかり固定し、腰をひねる。

 

CAT&DOG

背中を丸める。反らす。

※その他、全身のストレッチも行いましょう。

 

【強化期からの筋力トレーニングの例】

腹筋

 

腹斜筋

 

ブリッジ(両脚、片脚)

 

サイドブリッジ、プランク、バランスボールを使っての運動

腰を反らさないように注意する。

段階的に負荷量を調整し、状態に応じてトレーニングをしましょう。

 

さいごに

腰痛は、様々な要因が複雑に絡み合って発生します。練習方法(時間や内容)、練習環境(グランドコンディション、道具など)、監督・コーチの指導方法や管理、選手自身のコンディショニング(柔軟性、筋力など)。

これらの要因に問題はないか常に注意を払いながら練習することが、腰痛予防につながります。

【参考文献】

・馬見塚尚孝/高校球児なら知っておきたい野球医学/ベースボールマガジン社・2015

・大場俊二/腰椎分離症発生防止への取り組み‐早期受診、早期診断のために‐/日本臨床スポーツ医学会誌・2008

・日本整形外科学会HPhttps://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondiyolysis.html

・西良浩/腰椎分離症 spine surgeonが知っておくべきstate of the art/脊髄外科 2011

・高橋塁/プロ野球選手の腰痛管理とコンディショニング/臨床スポーツ医学・2013

・長谷川亜弓ら/高校野球選手における腰部障害のメディカルチェックとその予防対策/臨床スポーツ医学・2002

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