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はじめに
今回は「肩甲骨(けんこうこつ)」の働きと鍛え方について紹介します。ボールを投げるときに肩甲骨がグラグラで不安定だと、下半身や体幹からのエネルギーを効率よく腕に伝えることができません。より力強いボールを投げるには、肩甲骨まわりの筋肉を鍛えて安定させることが大切です。
肩やひじのケガ予防にもなるので、今回ご紹介するトレーニングを参考にしてみてください。
肩甲骨のはたらき
肩甲骨は、ろっ骨(胸郭)の上に浮かんでいて、唯一、鎖骨(さこつ)を介して体幹と連結しています。(図1)
図1 肩関節
投球動作で腕を上げていくとき、肩甲骨は上腕骨と連動して動きます(肩甲上腕リズム)。(図2)
その際の、肩甲骨が上腕骨を下から支えるような動きのことを「上方回旋」と言い、肩関節を安定させるためのとても重要な働きのひとつになります。
図2 肩甲上腕リズム・肩甲骨の上方回旋
肩甲骨が安定していないと
ボールを投げるとき、下半身は体幹を動かすときの土台となります。下半身が安定していないと体幹に力が伝わらないということですね。同様に、体幹は肩甲骨を動かすときの土台となり、肩甲骨は上腕骨を動かすときの土台になります。(図3)
ですから、肩甲骨が体幹(ろっ骨)の上でしっかりと安定していないと、その先の腕から指先にかけての動きも不安定になってしまいます。
図3
ということは、肩のインナーマッスルをいくら鍛えたとしても、土台としての「肩甲骨」が安定していなければ、力が十分に発揮できないということになるわけです。
投球で言うと、具体的には
- ボールに力が伝わらず、キレが出ない。
- スピードが出ない。
- コントロールが悪くなる。
- 疲れやすくなる。
- 肩やひじを痛めやすくなる。
といったような悪影響が生じます。
肩甲骨の動きをチェックしよう
あなたの肩甲骨は、しっかり動いているでしょうか?
両手をバンザイして、背中側から「肩甲上腕リズム」や「肩甲骨の上方回旋」の動きを観察してみてください。スムーズに動けていなかったり左右差があったりしたら、土台としての肩甲骨が安定していない可能性があります。
翼状肩甲骨(よくじょうけんこうこつ)
神経の損傷によって前鋸筋(ぜんきょきん)という筋肉の麻痺が生じている場合、壁に両手をあてて上体を前方に倒すと、麻痺している側の肩甲骨の内側縁が浮き上がって来て、腕を前方へ上げられなくなります。(翼状肩甲骨)
前鋸筋の麻痺と判断されたら、原因となっている動作や肢位を避けさせると、平均9ヵ月で回復します。腕の挙上制限などの障害が強い場合は、肩甲骨固定装具を装着します。
肩甲骨周囲筋の鍛え方
インナーマッスルを鍛えることも大事ですが、土台となる肩甲骨まわりの筋肉を鍛えることも、安定した投球動作を獲得するために重要です。以下、いくつかのトレーニングを紹介していきます。
僧帽筋
肩甲骨を内側に寄せる動きを意識して行う
肩甲骨の力でチューブを引く
前鋸筋
肩甲骨を「寄せる・開く」動きを意識する
チューブを使って
肩甲骨を「寄せる・開く」
ストレッチポールを使って
肩甲骨を外側に開きながら両腕でポールを上へ転がす
肩甲骨まわりのセルフストレッチ
肩甲骨を自由に動かすためにはストレッチも欠かせません。トレーニング後や入浴後に行うと効果的です。
僧帽筋、菱形筋
前鋸筋
ひじを伸ばしたまま四つ這い位になり、脱力する。
背部・腰部
あぐらを組んで座り、両手を斜め方向に伸ばしながら体をひねる。
両手を頭上で組み、上へ伸ばしながら体を横&前方にたおす。
大胸筋・小胸筋
前腕を壁で固定し、ひじの位置を保持したまま首、体を回旋させる。
胸を張って両手を後ろで組み、下方に伸ばす。
まとめ
投球動作は全身を使って行う運動ですから、下半身、体幹、肩甲骨が安定してこそコントロールが安定し、強くて速いボールが投げられるようになります。
普段はあまり意識することのない「肩甲骨」だと思いますが、けっこう重要な存在です。
野球のパフォーマンスアップやケガ予防のためにも肩甲骨を鍛えましょう!
参考文献
- 実践MOOK・理学療法プラクティス肩関節運動機能障害.何を考え、どう対処するか/2009
- Donald A. Neuman/筋骨格系のキネシオロジー/医歯薬出版株式会社
- 日本整形外科学会HP
- 工藤慎太郎/運動療法の「なぜ?」がわかる超音波解剖/医学書院
- 小柳磨毅/ストレッチング アスリートケアマニュアル/文光堂・2007
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